五月に入り、私立小学校の学校説明会が目白押しです。そこで、今日は受験の準備について一言。
受験のペーパーテストの範囲は、大きく分けで数量・図形・記憶・言語・推理・常識という範囲に分かれ、難易度の高い問題は、当然全体的な正答率も悪くなるので、準備としては、ペーパー重視の学校を受験する場合以外、基本的なポイントが理解できていれば、必要以上に難しい問題をさせることはないと思います。むしろ、ペーパーの量や難易度に親がこだわるあまり、子供を勉強嫌いにしてしまうことこそ問題で、昨今、学校側も、ペーパー試験は、いわゆる足切りという目線で行われ、それよりバランスの取れた人間性を重視する傾向が強いように思われます。そういった意味で、ご家庭ではペーパーを数多くこなすよりも、オールラウンドな生活力を子供に身に付けさせることの方が受験突破の近道だと思われます。
そこで、ご家庭で心掛けていただきたいことを少しお話させていただきますね。
最近、特に重視されるのが行動観察の試験です。グループで遊ばせたり、ゲームをさせたりする中で、リーダーシップが取れるか、ルールが守れるか、協調性があるかなどを見ようとするものです。遊びに夢中になると、その子供の個性や家庭での生活態度や躾も透けて見えるものなのです。
グループの中で、リーダーシップを取れる子ばかりが合格するわけではありません。学校側は、集団の中で、単に目立つ子を取るのではなく、光る子を選びます。性格的に控え目なお子さんが訓練によって無理に目立つことをしても決して光らないのです。集団の中で、自分の頭で考え行動出来る子、自分の果たす役目を心得ている子、その役目に一生懸命取り組む子、周りへの配慮のできる子、そんな子が求められるのです。そして、それは一朝一夕に身に付くことではなく、日々のご家庭でのご両親から学ぶ姿勢なのです。親が子供のお手本です。
お子様を明るい元気な子にしたいなら、お母様が自ら率先して、お買いものに行って八百屋さんに明るく元気に挨拶なさるなどの姿を子供に見せなくてはいけません。常に客観的にご自分を見つめ、お母様ご自身が、子どもに自分のようになって欲しいと胸を張れるような、自分自身が子供のお手本という意識を持って気を抜かず教育していただきたいのです。
子育てにおいて一番大切なこの時期での、こういった心がけは、受験の結果の合否にかかわらず、必ずお子様の財産となりますので是非心がけてください。特に、年長さんのご父兄においては、秋の願書を書く際、ご家庭の教育方針としてこんなことを心がけて生活して参りました、例えば、、、と堂々と書くことができる材料となります。
具体的には、生活の場に教育の材料はいくらでもあります。例えば、公共の電車やバスの中でも、お年寄りに席を譲ることは勿論、靴も脱がず後ろ向きに座る子やお化粧する女子高生などを見つけたら、お子様に「あなたは、どう思う?」と問いかけ、何故いけないかを言語化させます。お母様が、「あの人はこうこうこうしているからいけないわよね?」「うん」という受け身ではインプットが弱いのです。この言語化するということは、能動的に自分の考えを相手に分かるように説明することにより、自分の頭で考える力を養います。こうした自分の頭で考える機会を積む訓練は生活力や社会性を身につけさせる上で、とても効果的です。
また、洋服の着脱などは、最初時間が掛っても、なるべく自分でさせるのは勿論のこと、お子様にお手伝いをさせることは指示行動の良い訓練にもなりますので、積極的に指示を与え、色々させて下さい。
例えば、「一度しか言わないからよく聞いてね。上から二番目の引き出しからおたまとしゃもじを出して、一番下の開き扉を開けて一番小さいボウルを出して持ってきて」とか「この3個のおまんじゅうと6枚のおせんべいを3つのお皿に同じ数になるように分けてね。」など、一度で正確に聞き取り、行動できるようにさせる日々の訓練は、受験の指示行動に結びつきます。そして、できたら褒める!これを繰り返すことによって、お母様に褒められるのが子供は大好きですので、指示を意識して聞き取ろうとするようになります。
お台所には、勉強の材料がいっぱいです。季節の野菜を買ってきて、縦と横に切ってその切り口を子供に見せてあげましょう。そして、できれば写生させて下さい。ペーパー試験に絵となって出てきますが、本物を見たことがあるのと無いのとでは印象の残り方が全く違います。
このように、ご家庭では、教室だけでは学びきれない経験を、お子様になるべく沢山させていただきたいのです。そして、何をしてどう思ったを言語化させる。試験の時の口頭試問にどれだけ役立つかわかりません。何度も言うように、付け焼刃が利かない部分です。
それと、最近は核家族化が進み、人間関係が希薄になり、殺伐とした殺人事件が増えてきた影響でしょうか、「命」を再認識している学校が多いように思います。動物、植物、何でも利用してご家庭で命の大切さを教えること、だから「あなた」が大切で、お友達が大切という理論です。
さあ、毎日の生活が教育です。お父様やお母様が、気を抜いて生活していてはダメですよ。お子様の幸せな将来のために、今しかできないことをしてあげて下さいね。
2009-5-18